使命を受け、ある政界の有力者との密談を終えたヴィタは、さてティディアと合流するまで何をしようかと考えた。仕事は山ほどある。だが、王女からは自由に過ごしてよいと言われている。
祝日の昼下がり。
ケルゲ公園駅前は行き交う人、人、人で賑わっていた。
駅の正面口を出て右へ、ロータリーに沿って歩いていくのはケルゲ公園へ向かう人々。ここを出てすぐのカルカリ川に架かる石橋を渡れば川岸に広がる公園はもう目の前である。一方、駅を出て左に行くのは繁華街を目指す人々。左右どちらの流れにも多くの人出があるが、この時間は右手に勢いがある。反対に駅へ向かってくる人々は左手に多い。ただその数は左右ともに逆流に圧されて心細い。
ヴィタは駅舎の傍に佇む。
新たに列車が到着したらしい、駅から大きな人波が溢れ出す。足の踏み出し踏み下ろされて波はどうどうと鳴る。その
何か面白そうなことはないだろうか、なければどこかへ探しに行こうか。
ロータリーの中央には大きな
「癒しの
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ヴィタは、歩き出した。