透明な白色の中に黄が、やがて赤色が差し始めた陽光が射し込む車内は、人も少なくとても静かで、線路の上を金属の車輪が転がる音が、床底から伝わるモーターの振音がやけに大きく聞こえている。
レールの接合部に差し掛かるとタタッタタンと鼓動のように刻まれるリズムは、小春日和の羽根蒲団のような温もりの中に、深く染みこみ瞼の力を緩めてくる。
一定の間隔で、車内に現れては去り現れては去っていく電柱の影法師、その繰り返しはまるで、睡魔を手助けようとする催眠術師のタクトのようだ。
宮永ミチルと鴨井天子は、車両の端の三人掛けの席に座り、冬物の服を詰め込んだ紙袋を足元に何を話すこともなく、うつらうつらとスライドしていく町並みを眺めていた。
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20050828-0901-20050901+20060513