ドアを開くと、王女様が白目をむいて倒れていた。
口から泡も吹いている。
部屋の中ほどには怒りを背負う鬼がいた。
その手に額を締めつけられて、新たな生け贄がまた泡を吹いている。
「……」
ハラキリは、ドアをそっと閉めた。
そして考える。
触らぬ神に祟りなし。
されど触らぬが故に祟ってくる神もある。
まことこの世は理不尽だ。
それにしても何が起こったのか。あの執事まで処刑されるのは珍しい。すぐ間近に倒れていた王女はドアに投げらつけられて頭から激突した挙句に跳ねッ返り、ついでにキリモミ状態で墜落したのだろうか。清楚な服に包まれた肉体を奇怪にねじらせて、しかも大股をかっ
思い返せば卑猥な
「となれば一体何にしろ、他人が見たら誤解しますよねえ」
小さくつぶやいたハラキリは、そのままドアの前に佇んだ。
怒れる鬼に触れず、さりとて何事も触らぬままに置くこともなく、このドアを誰かテレビ局のスタッフが通らぬように番をしよう。そうしてこれを供養とすれば、祟りもきっと避けられよう。というか避けさせてください。
「……やれやれ」
収録までに事が収まればよいが……
いずれにしてもハラキリは、それまで無駄に暇であった。