二本目の取材までの休憩中、ティディアがふと思い出したように言った。
「ねえ、ニトロ」
「なんだよ」
「私達、付き合ってから一年が経ったじゃない」
「経ってない、一年どころか一秒たりとて経ってない」
「色々あってばたばたしていたから一周年のお祝いをし損ねちゃったでしょ?」
「し損ねるも何も元々そんなものは無い」
「そんなことない! 私達『映画』のクランクアップの日に正式に付き合い始めて、ファーストキッスもその時だっていう設定じゃない! 忘れたなんて言わせないわよ!」
「設定言ったな、おい。てか嫌なことを思い出させやがって」
「嫌なことだなんて誤魔化さなくっていいのよ? 美しい思い出、でしょう?」
「いいや醜悪な心的外傷だ」
「酷い!」
「酷い!? 無理矢理やりやがって酷いのはどっちだ!」
「だってあのキスで私は妊娠したのよ!?」
「生物学的にありえないよな!?」
「あなたには聞こえないの? ほら、私達のベイビーが泣いている」
「聞こえてたまるか、てか聞こえたらヤバイだろ」
「ヤバイ、すっごい可愛い」
「続けるんかい」
「目元なんかニトロにそっくり、鼻は私かな?」
「ご想像でお楽しみのところ悪いがすっごい不愉快だからやめてくれ」
「そう、想像妊娠で生まれたこの子は想像長女」
「想像妊娠の設定もまだ生きてんのかい」
「想像の中ではニトロは絶倫でぶち込まれ続ける私は毎夜足腰絶たなくなっちゃって」
「だからやめろっつってんだろバカ女」
「息も絶え絶えな私を許さず攻める貴方は、でも素敵なの」
「おいこら」
「やすませて、そんなおっきいので「だから「やだ「おい「ッやめないでぇ!「やめろっつってんだろクソ痴女ぉ!」
「ところで真面目にニトロは子どもは何人欲しい?」
「お前とのって話なら一人もいらない」
「一生二人で暮らすのもいいわねー」
「はっはっは、いい加減ぶっとばすぞぉ」
「明日は晴れかしら」
「予報だと雨だな」
「大雨みたいね」
「知ってんじゃねぇか」
「午前中は傘を差しても濡れるような大雨だそうね」
「そう言ってたな」
「既に私のお「それ以上はエルボーな」
「ラジオは生放送かあ。た・の・し・み・ねー」
「よし、いざとなったらお前の顎を砕いてやる」
「エルボーで?」
「芍薬、ハンマーを買っておいてくれる? 杭をち込むようなおっきいの」
「承諾」
「!」

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