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 おひめさまへ。アニー・フォレストです。ハンナさんにおせわになっています。ハンナさんといっしょにくらすようになってから、1ねんがたちました。ハンナさんはママのふたごのおねえさんです。でも2人はにていません。「二卵性双生児(インターネットでしらべました)」というのだそうです。ママはおうじさまにつれれれてどこかへいってしまいました。パパのことはよくわかりません。ハンサムだったそうです。でもハンサムだっただけだとママは言っていました。ママはハンサムな人としかいっしょにいたことはありません。おひめさまだからだそうです。でもママはおひめさまではありません。そういったらぶたれました。おとこのひとはママをおひめさまといっていたのでママはおひめさまなのかもしれません。でもやっぱりおひめさまはティディアさまとミリュウさまだけみたいです。よくわかりません。
 ママがいなくなったあとわたしはひとりでくらしていました。いつもみたいひとりでごはんをかいにいったとき、マンションのケイビインさんがわたしにママのことをききました。おおさわぎになりました。わたしはおじいさんとおばあさんの家につれられていきました。おじいさんとおばあさんにさいごに会ったのは2さいのときみたいです。5さいのわたしに「3ねんぶり」と言ってたから5ひく3で2です。おばあさんはわたしに「アンナの小さいころにそっくり」といいました。お口はわらっていましたけれどおめめはわらっていませんでした。そのわらいかたはおこってわたしをぶったあとでわたしにあやまるママのおかおによくにていました。でもそう言うとおこられそうな気がしたのでだまっていました。おじいさんおばあさんはわたしの「親権者(これもインターネットでしらべました)」になりたくないみたいでした。おじさんたちとけんかしていました。わたしは『アニー・グロッサ』のアニーと同じように「しんせき中をたらいまわしにされる」のだと思いました。わたしもアニーです。でもじょうきょうは『マクガーソン家のアンナ』のアンナににてます。よくあるはなしよ、アンナはいっていました。ほんとうによくあるみたいです。アンナはママのなまえですが、ママとアンナはにてないみたいです。
 そんなわたしの「親権者」になってくれたのがハンナさんです。ママがいなくなったことを知ったのは1ばんさいごだったそうです。ハンナさんはママと仲がわるかったとおもいます。ママはわたしをぶつときに「おまえみたいのはわたしの子どもなんかじゃない、ハンナのこどもなんだ」と言っていました。とてもひどいわるくちのつもりだったみたいです。ママはいろいろなことをいっていたけれど、おぼえているのはわるくちばかりです。
 ハンナさんはおじいさんとおばあさんとおじさんたちとけんかしました。そのあとでハンナさんがわたしをつれていこうとしたとき、止める人はいませんでした。みんなほっとしているようでした。みんなびっくりしているよでした。ハンナさんもびっくりしているみたいでした。わたしのにもつをタクシーのおしりにいれているとき「なんてバカなこと、わたしはほんとうになんてバカなんだ」と言っていました。ハンナさんは「無口」です。はずかしいのですが、わたしがおねしょをしたときも「無口」であわてていました。おねしょをしたわたしをおこることもありませんでした。朝はわたしをみてくれませんでしたが、夜はねむるまえに「だいじょうぶ」といいました。ぎゅっとしてくれました。ママのギュッとはちがいます。それとおねしょをしたときママはたくさんぶちます。ハンナさんはそれからまいにちねむるまえにぎゅっとしてくれました。わたしはだんだんおねしょをしなくなりました。「だいじょうぶ」になりました。だからハンナさんが言ったことをわたしはぜんぶよくおぼえています。はじめての日、ハンナさんは「きょうからここがおうちよ」とちいさなこえで言いましや。「たべれないものはある?」「ベッドはあなたがつかって」わたしのベッドができるまでハンナさんはソファでねていました「おやすみなさい」その日はたくさんいっしょにいたけれと、ハンナさんがちいさなこえで言ったのはそれだけです。それからもハンナさんは「無口」です。「ジェスチャー」がしゅりょくです。でもいまはハンナさんのおめめをみねばわかります。
 ハンナさんはジムインさんをしています。おかねはあまりないようです。ママみたいにきれいな服やきらきらした石やアクセサリーはもっていません。おへやにもあまりものがありません。おやすみの日、ハンナさんはいつもソファにすわって、まるくなってインターネットをみています。ハンナさんはなにをみているのかおしえでくれませんが、わたしは知っています。ハンナさんは服がすきみたいです。おけしょうとヘアスタイルにもきょうみがあるです。ファッションサイトです。でもハンナさんはおしゃれをしません。ハンナさんのもっているおけしょうのかずはママの半ぶんの半ぶんよりもっとすくないです。ときどきしっぱいしています。おりょうりもじょうずじゃありません。だから朝はいつもシリアルです。お昼は日用栄養食ゆじゅあれーしょんかパンをかってます。夜はいつものレトルトディナーです。もりつけるときは、もりつけもじょうずじゃないので、わたしのやくめです。ママとくらすときからわたしのシゴトだったので、わたしはハンナさんのおさらにきれいにもりつけできるとうれしいです。ハンナさんは「不器用」みたいです。ハンナさんは服をかうものにがてです。そういえばママはハンナさんのことをセンスがないといっていました。でもちがうとおもいます。はじめはすてきなのに、だんだんふしぎになっていきます。すてきな服がありすぎるのがいけないのです。テンインさんの「フクザツな」おかおをみて、いつもハンナさんはテンインさんにおまかせすることにしてしまいます。でもハンナさんは服をあまりかいません。おうちではいつもおなじ服です。かみもいつもうしろでむすんでいるだけです。おおきなめがねをかけていつもうつむいています。なのにわたしの服をかってくれます。ご本もかってくれます。だめということはあまりありません。でもなんどもだめとおこられました。おうだんほどうのないところをわたろうとしたときは(ママとはそうしていたのです)びっくりするくらいにおこられました。ママのことばをまねしてもおこられました。そんなときもハンナさんはあまりしゃべりません。でもかなしそうです。わたしはママのことばをまねするのをやめました。じのかきかたをおしえてくれたのはハンナさんです。おひめさま、ちゃんとかけていますよね?いっぱいかけるのはわたしのちょっとじまんなのです。わたしがいることで、ハンナさんには「経済的負担」がかかっています。でもハンナさんはわたしといっしょにいてくれます。いつもおなじおかおをしていますが、いやなおかおをしたことはありません。ママはよくここにしわをよせてこわくていやなおかおをしていました。わたしは ママにそっくりなのだそうです。ハンナさんもママのことはきらいみたいです。でもハンナさんはママみたいに「でていけ」なんていいません。おやすみの日はずっとおうちでいっしょにいてくれます。おねがいしたらいっしょにあそんでくれます。ようちえんにまいにちおむかえにきてくれます。うそでろうやにいれられたアニーをたすけてくれたおじさまよりやさしいとおもいます。でもおじさまはアニーのおとうさまの「親友」でした。ハンナさんはママの「親友」じゃないとおもいます。なのにどうしてでしょうか。おひめさま、わかりますか?
 わたしがないていたとき、ママはわたしを「ヒキガエルみたいなこえでなくな」といってわたしをぶちました。そのあとでわたしを「やっぱりおまえはハンナのこどもだ」といってまたぶちました。ということは、ママはハンナさんのこえをヒキガエルさんのようだとおもっていたようです。わたしはそうはおもいません。ハンナさんのこえはとてもきれいなこえです。いちどだけハンナさんがおうたをしたことがあります。わたしはおもわずはくしゅしました。そうしたらハンナさんはおかおをまっかにしておうたをやめてしまいました。そのあとどんなにたのんでもうたってくれません。わたしは『三歳からのピアノアプリ』でピアノをれんしゅうしています(フリーソフトでひょうばんがよかったものです)。わたしがピアノをじょうずにひいたら、きっとハンナさんはおうたをうたってくれるとおもうからです。アプリでひくのもいいとおもいますが、ほんもののピアノでひいたほうがきれいです。おみせできいたとき、おもいました。だからハンナさんのおたんじょうびにほんもののピアノをわたしはひきたいです。だからおこづかいをためています。でもみちはとおいみたいです。
 それからわたしははやくおおきくなりたいです。わたしのゆめはメークアップアーティストです。メークアップアーティストになって、ハンナさんにきれいなおけしょうをしてあげたいのです。ハンナさんはいつもうつむいていますが、きれいです。ちょっとおはながおおきいけれど、ママがいうようにぶさいくなんかじゃありません。ハンナさんはもっと「自信」をもっていいとおもうのです。でもそういってもハンナさんはこまったおかおをするだけです。おけしょうをすると「自信」がつくってテレビがいっていました。だからハンナさんはおけしょうをするべきです。ファッションサイトをみているハンナさんはたのしそうです。たのしそうなハンナさんをみているのはうれしいです。ハンナさんがファッションサイトみたいにきれいになってたのしそうにしているのをみれたらもっとうれしくなるとおもいます。だからわたしははやくおおきくなってハンナさんをきれいにしたいのです。わたしはアニーですが、アニーではありませんので、アニーのしたようなおおきな「恩返し」はできないかもしれないけれど、それくらいならできるとおもいます。でもときどきふあんになるのです。わたしはせがちいさいです。はやくおおきくなりたいのになれません。ママの子どもですから、ママみたいになってしまうかもしれません。そしたらハンナさんにきらわれてしまうかもしれません。ハンナさんにきらわれるのはいやです。わたしはハンナさんの子どもになりたいです。ママのじゃなくてハンナさんの子どもがいいのです。でもわたしはママのちいさいころにそっくりなのです。おひめさま、わたしはハンナさんの子どもになれるでしょうか。ハンナさんの子どもになって、ちゃんとおおきくなって、ちゃんとハンナさんにおけしょうすることができるでしょうか。ハンナさんはよろこんでくれるでしょうか。おひめさまはなんでもしってるってハンナさんがいってました。だからおしえてください。よろしくおねがいします。アニー・フォレスト。

ついしん。ハンナさんもフォレストといいます。わたしもおんなじです。

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