「よく、お気づきになられましたね」
「何だかねー。色々あったからさ、カメラってものに敏感になってるのかもねー」
「それはちょっとした特技です、ね」
「そうだねぇ、でも気づくのが遅かったよ。ピアス型の隠しカメラか、だからわざわざピンで留めて耳に髪がかからないようにしてたんだね。念入りだ。それならきっとばっちり撮れてるよ。なあ、ヴィタさん?」
「慌てふためくニトロ様は、とても可愛らし痛い」
両肩を握りつぶされそうな威力にヴィタは口を結んだ。
「悪趣味じゃないかな? そういうの」
「……ティディア様にもプレゼントを……と」
「喜ぶかな、そんな映像」
「最近、ニトロ様のガードが固すぎてなかなか迫れず哀しいとおっしゃっていました。そして……先日のトレーニングジムでのことを覚えていらっしゃいますか? 間接キスといった私にニトロ様が焦っていたこと。ティディア様は久しぶりにそんなニトロ様のお顔を見たかった――と、本当に残念そうに」
「はっはあ、なるほどそれで提案したと」
「はい」
「こんな人を弄ぶ催しを、提案したと」
「……はい」
ニトロのコメカミは怒りの鼓動に脈打っている。
彼の右手がヴィタの肩から外れ、指でそっと彼女の耳に触れた。まさか耳たぶを引き千切ってピアスを奪うつもりなのか。ヴィタは身を強張らせた。
――と、
「こら!」
その時、横合いから怒鳴り声が飛び込んできた。
罪人を逃がさぬようまず耳を掴みそれから両の手でピアスを外そうとしていたニトロは、しかし、それを続けることなく反射的に声のした方向へ振り向いた。
その顔が普段のニトロのものに戻っているのを見て、ヴィタは安堵した。こうなれば驚異の『馬鹿力』はもう消えている。ほっと内心に息をつき、そして彼女もニトロの視線の先へと顔を向けた。
そこには、小さなアンドロイドを傍らに従え腰に手を当て仁王立つリセ・ポルカトがいた。