瑞々しき霊気を湛える森林に、その王国はあるという。戦乱渦巻く時の中で、豊穣の千年を数える魔法の国。大国や魔物の侵略も敵わず、そこに住む者たちは健やかなる時を謳歌している。
伝説があった。
その王国の深遠、霊気の森の何処かに息づく女神。竜と人との間に生まれた心優しく美しい女神は、老いることなき少女の姿。六日の時は夢幻の中で、一日一夜に歌いて生きる。森を生んだ霊樹の虚で、王国に絶えることのない幸いと加護をもたらしている。
まことしやかに囁かれていた。
だが、誰もその姿を見たものはいない。ただ流れるは、人の口を伝う想像の膨らみ。
誰かが囁いた。
女神の心臓はいかなる病も治す不死の霊薬。その血肉は魔なる物共に神に等しき力を与える。
誰かが伝えた。
そのために、女神の傍らには屈強なる守護騎士が常にあると。
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20040331-0922-(20051004)-050114+0510+1004-051029(再掲載)