天は低く、空は灰色。
切り立つ崖と広大な海に挟み込まれた僕の町は、いつも重苦しい空気に満ちていた。
それはきっと、欠けた櫛の歯のように乱立する煙突が吐く灰燼のせいじゃない。弧を描いて町を囲む巨大な崖の岩壁が、僕たちから逃げ場を奪っているからでもない。切れ間もない灰色の天幕が、朝を追いかけて崖を昇る太陽すら翳ませてしまうからでもない。ましてや、どこまでも広がる鉛色の海が、僕たちの心を包み込んでしまうからでもないだろう。
誰も判らない、この息苦しさの理由。だから、余計に重々しく感じて、誰もが口を閉じている。
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20040315-070312-0314