セラニー・ヒルのアイス売り メニュー

 できることならば、太陽を殴り飛ばしたい。
 この暑さはなんだ。じりじりと陽が鳴っている。突き抜ける青空に浮かぶ雲らも暑いのか、太陽を隠すのを嫌っている。そのせいで無防備な地表には、手加減を知らない暴君の熱が我が物顔でのさばっていた。
「う〜。あっちい……」
 炎天下で重いペダルを踏み続けるのは、さながら拷問だとトウコは思った。
 汗が休みなく落ちていく。十六にしては幼さが残る顔にサンバイザーが作る影程度では涼を得られず、その中で眼は力をなくして、ただ眉間に刻む皺だけが色濃くなっていた。
「あっちぃ」
 何度も同じ言葉を口にして心に溜まる熱を追い出しながら、トウコは進んでいた。暑さで人も少ない大通り、熱をはね返す黄土色の石畳の道で、商売道具を乗せた小さなリヤカーを引く三輪自転車をひたすら漕ぎ続けていた。

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20040720-050712-12