無人タクシーに乗るニトロ・ポルカトの画を欲し、我慢が効かなくなったとばかりにタクシーの前に出る中継車があった。
側面にATVのロゴを描いたそれは十分な車間距離も取らず、商売敵に場所を奪われないようギリギリの空間に入り込むと、悠々として車内にカメラを向けた。
独占映像だ。
先からずっと続けられている生中継。この事態が一体何にしろ、とにかく謎の教団の襲撃を退けたばかりのニトロ・ポルカト、『王女の恋人』にして『スライレンドの救世主』たる彼のリアルな表情が期待された。
――が、しかし。
その期待は、思いもよらぬ驚愕によって消し飛ばされた。
レンズを通してATVのチャンネルを見る無数の目にばら撒かれた光景は、文字通り無人タクシー。ニトロ・ポルカトのいない無人の車内!
ただ、それだけだった。