5:00 ―吉― (ニトロ:スタート)
ぱちりと、目が醒めた。
不思議なほどに快適な目覚めだった。
一息に持ち上げられた瞼をそのまま下すことなく、天井を見つめる。
ゆっくりと息を吸いこみ、吸い込むのと同じ速度で息を吐き出しながら体を起こしていくと、声が聞こえた。
「オハヨウ、主様」
声を発したのは、ベッドが寄せられている側とは反対の壁際で凛と背筋を伸ばして正座するアンドロイドだった。切れ長の目を閉じ、顔を凍りつかせたまま、それなのにどこか微笑んでいるような表情で細く唇を動かす。
「主様ノ体内時計ハ『
アンドロイドの瞼が静かに持ち上がる。ほんの一瞬、黒い瞳の底にほのかに燃え上がった電子の火が、カーテンに曙光を遮られた暗い部屋の中で星のように瞬いた。
「自分でもびっくりだよ。でも、ひょっとしたら夢の中で時を数えていたのかもね」
寝ぼけたところもなく、はっきりとした声を聞いたアンドロイドは今度こそはっきりと微笑んだ。
「ダトシタラ、ソリャ随分ト忍耐強イ夢ダネ」
「うん。全く覚えていないのが実にありがたいよ」
とぼけたようにそう言うと、ユカタを着たアンドロイドの肩が揺れた。機械とは思えぬ人間らしい仕草に笑みを自然と引き出されながら、ニトロは言った。
「おはよう、芍薬」