西大陸にマナランという町がある。アデムメデスでも有数の穀倉地帯であるアボド平野の隅に位置し、大昔は集められた収穫物を各地に運ぶ拠点として栄えた。が、高速道路や飛行場など新たな輸送手段が増え、また取引先の盛衰に伴う主要輸送路の変化や市場の移転等がある度に力を削られ、衰退の一途を辿ってきた町である。
そのマナランが今、晴れやかに活気づいていた。
特に何が変わったわけでもない。未だ作物は東を抜ける高速を通過して行くし、あるいは北にある空港から頭上を越していく。南西の港の荷も西よりの環状路へ流れる。海のレジャーを求める者もその路を沿う。過去には穀物を山と蓄えていた倉庫街は旧跡となり果て、輸送業者を癒やした宿街は寂れて久しい。
確固とした産業もなく、それでも土地を離れられぬ人々が何とか仲間内で経済を回す困窮は終わっていない。
だが、マナランは希望に沸き立っていた。
何故なら、マナランはこれまで何度も振興策を講じては失敗し続けてきた――しかし努力は無駄ではなかったと知ったからである。その挑戦と挫折の歴史が、希代の王女の目に留まったのだ。