お見舞いに来てくれたニトロが置いていった紅いリンゴが二つ、小さな机の上で可愛らしく鎮座している。
それを目ににへらにへらとにやついていたティディアに、A.I.がメールの着信を報せた。
手元に浮かんだ
簡素に『お大事に』とだけ記されたテキストに、ファイルが一つ添付されている。拡張子を見ると画像であるらしい。ファイル名は――『狩り』。
「何かしら」
ファイルを開いたティディアの目尻が、下がった。
それは写真だった。
おそらく王都からずっと北西に行った山脈の中腹辺りか。
薄く冠雪した連峰を背景にしたリンゴ畑で、爪先立ちで真っ赤なリンゴに手を伸ばす少年が映っている。
「……」
脚立を使うには低い、しかし脚立を使わねば高い位置にある美味しそうな果実へと懸命に体を伸ばしているニトロは、何と言うか……可愛らしかった。
「やってくれるわねー」
ハラキリの演出が、悔しいくらい心憎い。
ティディアは写真とリンゴの実物を交互に見ながら――
それからしばらくして部屋にやってきた執事が指摘した後も、にへへらにへへらと頬を緩ませ続けた。