花よりナントカ

(第一部 7のちょっと後 『ハラキリ・ジジの8分の1日』・『おみくじ 大凶』の前)

 嵐のような『映画』撮影が終わってから、三週間。
 その間にニトロ・ポルカトは高等学校第二学年へと進級し――都合良く『映画たたかい』を共にした『戦友』と同じクラスになったことを非常に胡散臭く感じながら――かつ数日おきにやってくる王女からの極秘デートの誘い(不可避)を非常に迷惑に思いながらも、彼は意外にも平穏な生活が続いていることへの歓喜を胸に日々の暮らしを営んでいた。
 ……いや、歓喜を胸に、平穏な日々を噛み締めていると言ったほうがより正確であろう。
 彼は理解していた。
 その平穏が、新たな嵐の前の静けさに過ぎないことを。
 そしてその新たな嵐の勢力が文字通り死ぬ思いを味わわされたあの『映画』が足下にも及ばぬほどに強力で、その上とてつもなく面倒な性質で、さらに厄介で鬱陶しくて、加えて長く長くなっがーく頭上に停滞してしまうことを。
 だから、ああ、だからせめて今だけは――と、ニトロは思う。
 あの王女様が我が身を放っておいてくれたら、どんなに幸せなことだろう!
 あの王女様が、いちいち『映画』の試写が行われる度に製作スタッフを寄越して参加したくもない上映会に事実上無理矢理参加させてこなかったら!
 あの王女様が、時に自ら、時に直属の人員に我が身を攫わせ、その上でぬけぬけと『デートしましょ♪』なんて笑顔でぬかしてこなかったら!
 しかもあのバカ姫! そのデートときたら『まだ恋人の存在を報せないため』とかぬかしやがって人目のつかぬところで二人きり――ッ
「毎度毎度腹を空かせた肉食獣・ザ・自由暴走フリーダムを目の前に食うメシがどれだけ不味いか知らないだろ!! と、ニトロ君は嘆いていましたねぇ」
 過去、この星を制した覇王が最後に築いた王城。
 その地下にある『天啓の間』と呼ばれる一室にて、現在この星で最も大きな“力”を有する王女と二人きり――という、政財界の大物のみならず、裏社会の首魁であっても掌に汗を滲ませる状況下にあって、小さなテーブルを隔てて第一王位継承者と対座する少年は不遜と取られても文句の言えないほど気楽な態度で続けた。
「天下に名高い“デゴドルドナ”のローストビーフも、“ア・ロンシェリ”のクロブラットボルチェも“ソースルー”の十七層サンドイッチも『眉間に銃口突きつけられた毒見係の気分ってこんなんかなーとしか思えなくて、味の記憶と品の記憶が一致してない』そうです」
「例えば?」
 飄々とした調子の声を後押すように、華やかな声が星明りを透き抜けた。彼女がかすかに首を傾げると、美しい黒紫の髪の先が星屑に触れる。胸元が大きく開いた黒のチュニックワンピースから覗く肩と鎖骨のラインが星影に濡れ、肌は白磁の陶器人形にも通じる妖しさで、その肉感は、折に触れて人の情を悪戯に刺激しようと手を伸ばしてくる。
「ア・ロンシェリで飲んだコンソメスープがブロッコリー味、デゴドルドナの白桃のシャーベットは肉汁たっぷり、十七層サンドイッチは味がしなくて粘土を食っていた感じ――」
「それはちょっと……面白いわね」
「ええ、これは何とも興味深いもので」
 少年――ニトロ・ポルカトの『戦友』ことハラキリ・ジジの報告に返された王女の微笑みは、無数の星が生み出す薄明かりと薄暗がりを浴びて元より備わる魔的な魅力をより増しに増し、そこに誘惑や恋慕の情が込められてはいないと解っている者に対してさえも、まさに欲望の根幹を握り止められた実感を味わわせるものだ。
 そして自心に起きているその欲望の根幹を握りとめられたかの錯覚を、客観的に自身が語ったばかりの友達に起きた心理現象と併せ並べて観察しながら、
「人間の心理は面白いものだと、改めて思わされましたよ」
 ハラキリはそう感想を述べて、話を締めくくった。
 それから一つ息をつき、彼は眼前に置かれたティーカップを持ち上げて馥郁とした香りを鼻腔に送った。ひとしきり香りを楽しむと幽かに渋く仄かに甘い銘茶を口に含み、穏やかな熱を喉の底へと滑り落としてもう一つ息をつく。
 彼は目を対面に座す蠱惑の美女から、彼女の背後の壁へと移した。
 この『天啓の間』には、角というものがない。四方の壁、天井、床、それら全ての境界が丸みを帯び、さらに床以外の全ての面は平面を成さず、部屋全体としてはおよそ半球を模っている。また、全ての面に用いられている石材は純粋な黒色で、艶もなく、灯りで照らし出してもなお黒い。それだけでこの地下室は形も資材も城一番に特異なものであるが、しかしここにはそれよりももっと特異で最も特殊な特徴があった。
 壁、天井、床、その至る所に『星』が埋め込まれているのだ。
 光を当てても暗い岩肌に、一定以上の熱を帯びると弱光を放つ雷蛍石ライトライトという希少な石の大小が細かく緻密に散りばめられ、色も輝度も様々に加工され――まさに天空の星のごとく地下に輝いている。
 アデムメデス城の設計の折、覇王は選び抜かれた科学者と石工らに命じた。陽光届かぬここに宇宙を作れ、できなくば処刑する――と。
 それは当時の科学技術レベルからして、明らかに無理難題だった。完成品への王の要求も高く、日夜もない過酷な環境のために心身を壊した者や脱走を試みた者が次々と殺されていく中、彼らの艱難辛苦はいかほどのものであっただろうか。
 しかし、彼らは王に、覇王の要求に負けることはなかった。
 まだろくに電気への理解がない時代に発電方法を発見し電熱線の発明までこぎつけ、後にアデムメデス科学史において『悲劇にして奇跡の十年』と呼ばれる期間に、当時において画期的な技術をいくつも発明し、あるいは発見し続け、彼らは史上最も凶暴な王に課せられた使命を見事に果たしてみせた。
 ――そう、ここは宇宙だ。空を超えて切り出し運ばれてきた宇宙空間
 ハラキリの瞳には、銀河を背負う王女の姿がある。
 配線の妙で星たる雷蛍石の微細粒子は常に茫々と揺らめくように輝き、計算され尽くした星の配置が何万光年の遠近感を生じさせる中、無尽の光点は銀河が極めて緩慢に蠢いているかのごとく視野を騒がせる。
 『王』が背にする他に銀河はない。
 しかし撒かれた星々は銀河を浮いた存在にすることはなく、むしろ銀河がそこにあることこそが自然だと主張する――宇宙に散らばる大小様々な星々は、銀河をこそ支えるためにあるのだと。
 そして星々の支持を受ける銀河は、それを背負う『王』を讃えて煌めき、己を背負うこの者こそが『王』であると神に代わって認めている。また『王』を讃えて煌めくことによって、神の代理である銀河わたしすらもこの者に従うために存在するのだと宣言している。
 長くこの部屋にいる者は、しだいに自身が本当に宇宙に浮かんでいると錯覚するだろう。
 広大な宇宙には小さなテーブルと共に、『王』がいる。銀河ぎんがに祝福を受ける『王』とそれを見る者――つまり自分だけが、それだけがいるのだ……と。
 やがて広大すぎる宇宙は足場のない孤独を人に感じさせるだろう。
 頼れるもののない浮遊感、絶望にも似た虚空。
 美しい星々の輝きは冷たくて、心は凍えて縮こまる。銀河の中心核から音もなく轟いてくる圧倒的なエネルギーに、魂は怯えて跪く。
 そこにいるのだ、が!
 銀河を双肩にまとう王の瞳には星が散らばる。
 王の瞳孔は星の光を返さず奥知れない威を帯びる。
 頼れるもののない宇宙の中で、確固とした磁場を持つ存在がそれを見る者を震わせる。
 ああ、王よ! 王を見る者は、王に見られる者は、終には思う――王よ! どうか、どうかお守り下さい! あなた様の庇護がなければ、矮小なる私はこのままどこの果てへと飲み込まれてしまいます!
(……なるほど)
 ハラキリはお茶を飲み干し、思った。
 歴史の語るところによれば、初代覇王は当時大きな勢力を誇った四大宗教の主らとこの部屋で順次会談し、そして一人残らず『我らの宗派』――今では『アデムメデス国教』と呼ばれる――に改宗させたという。
 このことは、歴史……とはいえ今となっては時が脚色を加えた伝説……あるいは覇王神話とでも言うべきエピソードだろうとハラキリは思っていたが、実際にこの部屋の空気を吸ってみると、確かに史実もさもありなん――と考えを改める。
 世界制覇を成し遂げた王者と二人きりでこんな所に長時間閉じ込められれば、そりゃあ何か聞こえちゃいけないものも聞こえてしまうだろう。それが強い信仰心を持つ者であればあるほどに、真に『神の声』を聞いたと断じることもあり得るだろう。
 一昨年、東大陸最大の違法薬物組織が壊滅した際、内部情報をリークしたのは組織のボスその人であり、かつ彼から情報を引き出したのはかの『クレイジー・プリンセス』だという噂が裏社会に流れたが……それも本当かもしれない。聴取の舞台はまさにこの天啓の間であったというし、さらに獄中にいる組織のボスは今や狂信的な『ティディア・マニア』になっているとの事だから。
「ねえ、ハラキリ君?」
 たった一室が持つ力への感慨に耽っていたハラキリは、ふいに怪訝な声をかけられて目を王女へ戻した。
「何だか、一仕事終えた後のお茶は美味い――みたいな顔をしているけど」
 とうとう我慢が出来なくなった、とでも言いたげに彼女は言う。
「ええ。あ、もう一杯いただけますか?」
「ええ、じゃなくて。何か大事な話を忘れてない?」
 怪訝な声を少し険のある声に変えて言いながらも、ティディアは茶葉と茶器をてきぱきと扱って茶を淹れた。ティーポットの口からわずかに黄金を帯びた甘露を客のカップへ落とし、こちらの問いかけに訝しげな顔を返してきた少年にさらに言う。
「君はそんなに察しが悪かったかしら」
「はぁ……」
 ハラキリは一国の王女が茶を注いでくれたことに軽く会釈して、早速カップを手にすると唇を湿らせた。
「そう仰られましても、聞かせてと言われた『ニトロ君の様子』について、これ以上お伝えすることは何もありませんが」
「あるわよ。まだ私が一番聞きたいことは一言も伝えられてないもの」
「強いて思いつけるとしたら、お姫さんご自身への感想でしょうか? 例えばこういう仕草にくらくらしたとか、押し当てられた胸が柔らかくてむらむらした――みたいな」
「そうそう! でも『みたいな』じゃなくて正確なのを!」
「それに対する答えこそ、察せない貴女ではないでしょうに」
「うわ、何かそれ、ちょっと手厳しい言い方じゃない?」
「そうですかねぇ? 至極真っ当な言葉だと思いますが」
「手厳しいわよぅ。ね、何でもいいから教えてくれない? ニトロ、何て言っていた?」
「了解いたしました。そんなに無力感を味わいたいのであれば、何でも正確に教えて差し上げましょう」
「あ、やっぱいいわ。オッケー、それで十分」
 大昔、アデムメデスの宗教改革の大震源地となった一室で、宗教までをも統一した男の子孫は、たった一国民に対してぺろっと舌を出しかわいこぶって己が否を示してみせる。
(ふむ)
 その姿を、表立って逆らわぬまでも型破りな『クレイジー・プリンセス』に対して良い感情を抱いていない伝統派の貴族が見たらどのような反応をするだろうか。もし見ることができるなら見てみたい気がするが……いや、そもそもこの部屋にたかだか一般市民を招き入れては手ずから給仕する王女という時点で色々おかしいか。というか、それも今更か。
 歴史ある部屋に対する感慨とはまた違った趣を味わいながらハラキリが茶を飲んでいると、
「でさ、まあ確かにハラキリ君の言う通り、ニトロの反応がそんなもんだろうなってのは判っていたのよ。デートを重ねるごとに何だかガードも固くなっていく一方だし……。それだけならいいけど色んな反応も硬くなってきているし、何より肝心のツッコミに元気がなくなってきちゃってる」
「おや、そうですか? ツッコミに関しては、以前と変わらないと思いますが」
「違うのよ」
 ティディアは唇を尖らせた。
「表面的には全く同じよ。でもね、こう、手応えが違うの。丁々発止も間合いがほんの少しだけ違う」
「はぁ」
 ハラキリは眉根を寄せた。ニトロから元気が失せてきているというのは知っているが、ツッコミに関しては彼女の言い分は良く解らない。昨日も教室で彼にドツかれたが、それは実に受けていて気持ちの良い職人芸だった。彼と自分のやり取りは周囲も面白がっているようで、以前に比べて自分の周りにいるクラスメートの数は増える一方だ。
「とにかく、違うの」
 しかしティディアは強弁する。
 ハラキリは思案し、
「まぁ、おひいさんがそう仰るならそうなんでしょう」
 と、一応の納得を返した。もしかしたら、ボケだけが察知できるモノでもあるのかもしれない。
 ティディアはいまいち得心のないハラキリの反応にしばらく唇を尖らせていたが、やおら息をつき、
「一時的なものだろうし、解決策もないわけじゃないんだけど」
 そう言ってぺろりと舌なめずりをする王女の『解決策』とやらが何なのか……ある程度の予想はつくし、多少の興味も引かれるところだが、しかしハラキリは問わぬことにした。その代わりに、言う。
時期的に、荒療治の副作用リスクはとりたくないと?」
 ティディアは大きくうなずいた。そしてわずかに身を乗り出し、わずかに上目遣いにハラキリを見る。
「だからね? ものは相談なんだけど、聞いてくれないかな?」
 声のトーンを少々高めてティディアが最後に言った決まり文句を受け、ハラキリはカップを置いて腕を組んだ。
「猫撫で声は意味がありませんよ」
 嘆息混じりのハラキリに、ティディアは片眉を跳ね上げてみせた。その悪戯めかした様子にハラキリはもう一度息をつき、
「それに、相談、というより本題でしょう? わざわざこんな『接待』までして……全く、わざとらしい。交渉に情は挟みませんので、そのつもりで話を進めてください」
 呆れ声で指摘され、ティディアはニンマリと笑った。
「あら、察しがいいわね」
「先ほど、そんなに察しが悪かったかと聞きませんでしたかね」
「それはそれ、これはこれよぅ。大体、これまでは私が遠回しに協力してってお願いしても、まったく気づいてさえくれなかったくせに」
「解って無視していたんです。そちらこそ知っていたくせに」
「うん、知ってた。だから、この席を用意したのよ。じっくり相談したかったから」
 ティディアは、そのセリフの中で特に『相談』に力をいれて言った。どうやら……これは『依頼』のための“交渉”ではなく、単純に知己としての“相談”だということらしい。
(――ふむ)
 ハラキリは腕組みを解く間に計算を済ませ、切り返した。
「相談を強いたかったから、の間違いでしょう?」
「それを解っておきながら君が来てくれて、私嬉しくってついつい100g100万リェンのお茶を出しちゃった」
「そんなことを言われたところで、相談に情はみ入れられませんなぁ」
 平然と茶を啜るハラキリの耳を小さな舌打ちが叩く。下品に舌を打った王女はいかにも不満そうに口をへの字に曲げながら、しかしその瞳は相手の妥協を歓迎するそれだ。
「……言っておきますが」
 ハラキリはカップを置くと姿勢を崩し、背もたれにだらしなく体重を預けた。
「拙者はニトロ君の友達ですよ」
「もちろん解っているわ。でも、私とも友達でしょ?」
「おや、そうでしたっけ」
「そうよー。少なくとも私はそう思っているもの。私はハラキリ君の、お友達だって」
 ハラキリは、ティディアの瞳をジッと見つめた。元より情や思考を表に出さぬ彼女を相手に、眼の動きから言葉の真偽を探ろうとしても無駄なことだろうが……
「まぁ、いいでしょう。多分友達ということで」
「そうそう。それでいいの。ハラキリ君にとってもメリットばかりよ? 私が友達だと」
「そのメリットは小銭稼ぎのわりにデメリットは大借金になるような気がしないでもありません」
 その物言いにティディアは思わず口の端を持ち上げた。
「やー、言ってくれるわねー。この私を相手にそんな例えを面と向かって言ってくれるのは、君くらいのものだわ」
「他にもニトロ君がいるでしょう」
「ニトロはツッコミ。君のは皮肉。それとも嫌味?」
 ティディアは何がそんなに楽しいのか、呆れるくらい機嫌良く言う。
 ハラキリは一息の間を置いて、肩をすくめ、
「それで? 相談というのは……愛玩動物にしたばかりの草食動物を餌付けしたいのに味覚と記憶が狂うくらい全身全霊で警戒しちゃって美味しくご飯を食べてくれないので、ここらでお仲間を用意し安心させて、ついでに楽しくいじって可愛がりたい。だから付き合え、そしてニトロ君と楽しむためのネタがあったら提供しろ――というところでオーケーですかね?」
「さすがお友達、完璧な解答ね!」
 パン、と一つ手を叩いてティディアは笑う。
 機嫌の良さに加えてあまりに無邪気な彼女の様子にハラキリは苦笑し、
「お友達ならそちらも解ってくれていることでしょうが、いくらお友達に頼まれたからって一方の友達が嫌がることを進んで行うなんてことはありませんよ?」
「そうねー。もし、ハラキリ君が人の好いニトロの友達だったらそうでしょうねー」
 持って回ったハラキリの物言いにもティディアは笑顔を崩さず、細めた双眸の奥の奥から彼を覗き込むようにして、
「私は、解っているつもりよ?」
 言った。
「ハラキリ君は、私と同じ」
「……拙者がお姫さんと同じ、ですか」
「ええ。ちょっと、私と同じ」
「なるほど……ではどうちょっと同じなのか、察しの悪い拙者にお聞かせ願えますか」
 ハラキリの促しに、ティディアは含み笑いをそのまま言葉に変えた。
「ハラキリ君も、結構面白好きでしょ? 私よりずっと大人しいけれど、でも、このクレイジー・プリンセスとあのニトロ・ザ・ツッコミの間に起きる事に、興味を示さずにいられない程度には。機会があればニトロが嫌がるような悪乗りも辞さず、自ら彼をいじる程度には。そして、そうした時、結果的にニトロに殴られることになってもそれをコストだと平気で割り切れる程度には」
「……」
「君がとても抜け目がないことも承知しているわ。損得を量る天秤の精度は高いし、割り切りも早い。だから、何だかんだ言ったって解っているでしょ? ニトロの友達で、私の友達でもあれば、美味しい思いがたくさんできるって。大借金を補って余りある、小銭稼ぎで得られる貨幣は実は全て純金製だって」
「……」
「君がいつまで、どれくらい私とニトロの『夫婦漫才』を楽しむつもりかは判らないけれど、でも今は適度に楽しむつもりでしょう?」
「…………」
「ね?」
 腕組みを解いて少しうつむき、黙したまま拳で顎の先を軽く叩いて考え込むハラキリへ、ティディアは悪魔のように美しい笑みを送った。
「だから、遠慮なく楽しみましょうよ。友達同士」
 希代の王女は銀河を背負い、宇宙に浮かぶテーブルの向こうで両手を広げて『応』を待つ。
 一瞬、眼前の女と大昔に書かれた物語に出てくる人を狂わす妖女の姿がダブって見えて――ハラキリは、瞼に浮かんだその馬鹿げた挿絵を内心で嗤い飛ばした。
(まぁ、概ね――)
 彼女はこちらのことを利用しようとしている。どの程度利用したいのかは判然としないものの、まあ、ニトロ・ポルカトという獲物との“共通の友達”という接点の増加を図ると同時に、こちらが彼女にニトロの様子を伝えること以上の協力をしないことがないよう……つまり友達であるニトロのみに力を貸すのではなく、同様の論理で友達である自分にも力を貸すよう――縛りをかけておく、という二点は間違いない。
 ちらほらと『ティディア姫の恋人の存在』を“噂”として流し出し、その『恋人』を公にするための舞台ラジオ放送を前に、スタジオ映像を提供するサーバへの負荷対策や系列局との連携準備をちゃくちゃくと進めている現時点でこの『交渉』を仕向けてきた意味を鑑みれば、どうやらニトロとの『長期戦』を見越しての牽制であることも窺い知れる。
 さらには己の手札を増やし、選択肢を広げるための一手でもあろう。
(それに)
 こちらのニトロに対する立場はけして『完全な味方』ではないことを見透かした上での、この“魔女の誘い”自体も、嘘ではあるまい。
 一石投じることで何羽の鳥を得るつもりだろうか、この欲張り王女は。
(…………)
 だが……まあ、いいだろう。
「そうですね、楽しむこととしましょうか」
 利用する、という点についてはこちらも望むところだ。彼女の持つ『力』を利用すれば――因果なことに利用されることもあちらの望むところだろうが――得られる恩恵はとても大きい。
 まずは、今回。
 ちょうど腹に抱えている計画があったから、それに利用させてもらおう。
「とはいえ、今回は友達として協力しますが、程度や場合によっては『依頼』扱いにしますのでご了承下さい」
「あら、それは友達をお金で売るってこと?」
 ここにきてティディアが飛ばしてきた皮肉を、ハラキリは肩を軽くすくめて弾き飛ばした。
「友達そのものを売ることはしませんよ」
 ハラキリが返した応えは、彼の意思を示すに必要十分のものだった。もし、万が一にもこれを汲み取らないようだったら即座に前言を撤回して去るつもりだったが、しかし、ティディアはハラキリが思っていた以上に喜色満面でうなずいた。
「ドライなようで、ハラキリ君って結構情に篤いわよね」
「さあ、そう仰られても個人的には良く判っていませんので。返答は致しかねます」
「ふぅん、そう?」
 ふふ、と、唇を薄くして笑うティディアを見つめながら茶を飲んで、ハラキリは
「さて」
 と、勢いをつけて切り出した。
「これがまたなんともタイミング良く、この時期に相応しい心当たりがありましてね?」
 ハラキリの言葉を聞いたティディアは、ほんの一瞬、ほんの一拍にも満たない間、あえてわざとらしい態度を見せる曲者に意味ありげな視線を投げかけた後、まるで新しい玩具を手に入れた子どものように瞳を輝かせて口の端を引き上げた。
「聞かせてくれる?」
 その麗しく輝くクレイジー・プリンセスの笑顔を皮肉気な片笑みで受け止め、ハラキリは言った。
「辺境の星・地球ちたま日本にちほんという地域では、春になると――――」

 ……と、時にして六日前、ティディア-ハラキリ間にてそのような密談があったことをニトロは露知らず――というか思い当たりもせず。
 あの『映画撮影』からおよそ一ヶ月。
 とうとう明日にはその情報が正式に公開されてしまい、しかもその瞬間には、自分は『主役』として王女がパーソナリティを務めるラジオに出演していなければならないという絶望的な今日この頃。
 いよいよ平穏な日常が終わる刻を前にして、ニトロはそれでも――いや、だからこそ余計に“普通に”日常生活を送っていた。
 朝起きて、食事して、登校して、ぼんやり授業を受けて、級友と喋り、放課後は直帰するか(それともバカに絡まれるか)誰かと遊んでから帰り、夕食を取り、それからシャワーを浴びて寝る。
 できるだけ『映画』前と変わらず、できうる限り“それまで”と同じように暮らして、そうして“これから”起こる大変化への耐久性を保ち、かつ耐久性を高めていこうとしていた。大丈夫。自分は“そうなっても”こうやって生活していけるし、ちゃんと自分を保って身も心も守っていける――と。
 だが、いくらそう己に言い聞かせていても降りかかるストレスの灰は静かに、時に激しく大量に心に積もっていくもので……
 今朝、ニトロは、夢を見た。
 悪夢だった。
 あの城の玉座で『人生』が断末魔の悲鳴を上げていた。玉座に座し悲鳴を上げ続ける『人生』の膝には薔薇色の影が座り、影は『人生』の心臓に牙を突き立て血を吸い取り、血を吸うごとにさらに輝きを増していく。それを、青褪めたニトロ・ポルカトは黙って見つめていた。助けを求める『人生』に駆け寄ることもできず、震えて動けぬ無力な己を嘆くことしかできず、輝きのあまり薔薇色から虹色に変色した影の、その両目、その黒紫の瞳に射抜かれて――ニトロ・ポルカトは、血を吸い尽くされ砂と化して崩れていく『人生』をじっと見つめ続けることしかできなかった。声をかけることすらできず、ただただじぃっと、それはもう儚く、切なく、哀しく、痛ましく……
 うおお、寝覚めの悪さの何と凄まじかったことか!
 さすがに今日一日は立ち直れそうになかった。寝込みたいくらいだった。しかしニトロは顔色も優れぬまま半ば意地のように登校した。
 そして、力のない足でようやく校門に臨む道に至った時、親友に声をかけられたのだ。
「酷い顔ですねぇ。どうかしましたか?」
 ニトロは語った。今朝見た夢の話を。ハラキリは「素晴らしい追いつめられっぷりで」とゲラゲラ笑った。一発殴ってやった。
 殴られたハラキリはそれでもなお愉快そうに笑みを絶やさず、それに対するニトロの文句を飄々とかわした後、こう問いかけてきた。
「でしたら、今日は学校をサボってリフレッシュしに行きませんか? 良い場所がありましてね」
 最後の平穏な登校日。
 それを捨ててしまうのは勿体無い気もしたが、平穏にサボれるのも今日が最後となるだろう。
 ニトロは少し考えた後、
「サボりなんて悪さを働かせるんだ。リフレッシュできないようなところに連れてったら、またドツいてやるぞ?」
 と、冗談めかして言い、その言葉にハラキリは、
「それは怖い」
 と、笑みを見せた。

 一度家に帰って着替え、それから迎えに来たハラキリの韋駄天に乗って西へ約三時間の空を行き。
 ハラキリがニトロを連れてきたのは、王都に隣接するビネトス領にある町、ウァレを囲む山の内だった。
「ああ、『ハラキリ』って、そういう意味だったんだ」
 周囲は土の匂いと新緑の香りに包まれて、穏やかな昼下がり、ぽかぽかとした陽気は体だけでなく心までも温めてくれる。
「それにしても謝る度に腹を切るなんて、随分丈夫な民族だな」
 韋駄天を町の駐車場に置き、二人は山間の遊歩道を歩いていた。だが、遊歩道というわりに、二人が踏みしめる道は随分と荒れている。
「拙者も初めて母から聞いた時は、子ども心に耳を疑いましたけどね」
 山間部にぽかりと拓けた小さな盆地に発展したウァレは、周辺の景観の良さから過去は気軽に軽登山を楽しめる土地として人気を博していた町だ。しかし、ちょうど半世紀ほど前に近隣の盆地が人気ドラマの舞台となった際に客を奪われ、さらに当時、元よりの人気にあぐらをかいて何の手も打たなかったことが原因となって、以降、捲土重来の機会もなく衰退の一途を辿っている。
 ニトロとハラキリが連れ立って歩く道は何本もの登山ルートへ枝分かれる幹線も兼ねており、隆盛を極めた当時は平日でも多くの登山客が歩を共にしていたのだが、現在ではろくに手入れもされていない。
「しかし色々と聞いていると基本的にタフな民族らしくて」
「タフ?」
「亀に乗って生身で深海に潜り数日間海底で歌い踊ってから生還したり、竹製のポッドで大気圏突入しても生き延びる乳児がいたり」
「……」
 ニトロは、ハラキリに怪訝な眼差しを送った。
地球ちたま日本人にちほんじんって……確か同じ猿孫人ヒューマンだったよな?」
「映像も観たことありますが、母星うちと同じで取り立てて珍しくもない姿でしたよ」
「ってことは取り立てて珍しくもない平均的な人間でそんなことができるって?」
「伝聞ですから、多少の誇張はあると思いますけどね」
 と、釈然としない様子のニトロに、ハラキリはどこか楽しげにうなずき返しつつそう言うと、前方に見える分かれ道を左に行くべく進路をとった。
「……山登りに来たわけじゃないのか?」
 右の道は傾斜を増して、その鬱蒼とした森に消える先はほとんど獣道となっている。蔦の絡むボロボロの看板には、そこが登山ルートであることが示されていた。思えばハラキリは、道の分岐に差し掛かるたび登山ルートを避け、迷うことなく山裾のこの遊歩道を進んでいる。
 緩やかな勾配はあれども歩く足への負担はごく弱く、左手に川を臨み、川に沿って山陰へと伸びる道の先を見ながらハラキリは言った。
「別に汗をかきに来たわけではありませんから」
「……なぁ、そろそろ何を企んでるのか、聞かせてくれないか?」
「言ったら面白くありません」
「……何かその言い方、あのバカにそっくりなんだが」
 その声の底には、怯えがあった。しかしハラキリは飄々と、
「気のせいですよ。それとも、ニトロ君はネタバレした映画を楽しんで鑑賞できるタイプですか?」
「できないタイプ」
「なら黙っておきます。きっと、君には喜んでもらえることかと」
「まーた『君には』とか気になる言い方をする」
「お母上は園芸が趣味なんでしょう? ニトロ君は、幼少の頃、よくそれに付き合わされていたと言ってましたよね」
「何だ? いきなりヒントか? っつっても、俺は園芸が趣味じゃないぞ?」
「花を愛でる気持ちは持っている、と見越しているんです」
「それは……無いとは言わないけど」
 ニトロは顎に手を当て一度考え込み、
「なぁ、ハラキリ」
「はい?」
「何だかんだでネタバレしてないか?」
「これくらいは“さわり”ってところです」
「……そうかい」
 ハラキリは飄々として、いつも笑っているような顔から彼の真意を掴むことは難しい。
「それじゃあ、黙って期待しておくことにするよ」
 何やら白い――花弁だろうか。視界の左端に川を飾る白点を捉えながら、ニトロは言った。
 と、話題が切れたそこに、
「とは言っても、」
「ん?」
「“ハラキリ”するのは、本来は特に『ブシ』という支配階級の特権だそうで」
 普段は積極的に自身に関わる話題を振ることのないハラキリが、さらにかなり無理矢理話題を戻してくるのは珍しいことだった。ニトロは当然疑念に駆られてハラキリの横顔を見、そして悟った。
(あ、なるほど)
 先ほど、彼がどこか楽しげにうなずいていた理由が分かった。
 単純に、楽しいのだ。
 きっと今までは友達との会話にこういう話題を入れられる機会がなかったのだろう。
「そんな痛そうな行為が特権?」
 友達の機嫌の良さをそのまま反映したニトロの楽しげな促しに、ハラキリはうなずいた。
「それだけ強い覚悟を伴った崇高な謝罪行為、という位置づけでしょうか」
「ああ、なるほど。一種のステータスを示すものでもあるわけなんだ」
 それなら理解もしやすい。限られた者だけに許された行為、というものはどこの国にも多く見られることで……確かムットーという小星しょうこくでは権力者が過ちを犯した時は一時仮死状態となって――つまり擬似的に死んで――冥府で罪を購い現世における名誉を回復する儀式があると、テレビの番組で観たこともある。仮死状態からの蘇生が不確実だった時代においては、生還することは神に赦され祝福されたことの証明にもなっていたらしい。であるため、価値観として権力者=神に近しい者という構図を持っていたその国では、その行為そのものが一部の者にしか許されず、同時にそれこそが権力者に神威を与える最大の理由となっているという。
 “ハラキリ”と言う行為も、多分それに類するものだろう。
「それじゃあ、その『ブシ』以外にはやれないんだね」
「いえ、『ブシ』以外に『サムライ』も行って良いそうです」
「『サムライ』? それも階級?」
「……どうなんでしょうかねぇ。聞く限り、階級でもあり、観念でもあり、というような違うような」
 ハラキリは首を傾げて腕を組み、数拍の時を置いて、言った。
「概念的には『カタナ』や『ポントー』と呼ばれる刀を携えているそうで、とにかく強いそうです」
「強い? おかしいほどタフな民族の強いって、どんなの?」
「その動作は甲冑を身につけながら目にも止まらず、剣を振れば岩や金属をもやすやすと斬り裂き、しかし、自身はそれで何度斬られようと絶命しない」
「……それで?」
「必殺技を持っている」
「……何か、嘘臭くなってきたぞ?」
「『ブレーウチ』という必殺技はどんな者であろうと斬れるそうです」
「いや、既に普通に岩とか金属とか斬るって言ってなかったっけ」
「さすがにそれを食らっては、例え『サムライ』であっても死ぬそうで」
「ああ……必ず殺す技、だもんね」
「最終的には未来予知をして攻撃を避け、『イァイ』という道を踏破したものは鞘に収めた剣を光速で抜き打ちし、あまつさえただの金属の刀身からビームやレーザーを出したり、逆に敵のそれらを跳ね返したり。いざとなれば素手でも同様のことができるとかなんとか」
「…………何つーか、まるでゲームのキャラクターみたいなんだねぇ、その『サムライ』って。で、それが出来たら『サムライ』になれるの?」
「そのようですよ。元の身分が何であろうとそうして身を立てられる、例え『ブシ』にならずとも『ブシ』に匹敵し、場合によってはそれ以上の人間となれる。そのような存在である『サムライ』は、現地では一種神的な偶像ともなっているほどだそうです」
「偶像?」
「ほら、ウチでも貴族の騎士号とも軍の騎士号とも別に『騎士』や『聖騎士』などと聞くでしょう? 代表選手団を、アデムメデス○○騎士団――とか」
「ああ、そういうのなら何となく理解できる。うん、何か同じヒューマンっていうのに親近感も沸いてきた」
 ニトロの反応を見て、ハラキリはどこか面白そうに微笑を浮かべた。
「母は当初、辺境の少ない情報の中にあっても数多く出てくる『サムライ』の正体が掴めず、しかも何の共通項もない様々な分野で様々な形態の『サムライ』を確認できるため非常に困惑していたそうですが……」
「うん」
「今の君のように『自分達と同じ感覚』がそこにあると気づいた時には、やっぱり親近感を覚えたそうです。それでいよいよ地球ちたま日本にちほんに引かれていったと言っていました」
 へぇ、と、ハラキリの語りに感嘆を返し……ふとニトロは気になった。
「そういやおばさんは、何でそんな所に興味を持ったの?」
「母の名はランといいます。初めて見た『サムライ』が凛々しい婚約者のことを発音も同じに“ラン”と呼んだ時には驚いたそうですよ」
 へぇー、と、ハラキリの答えにニトロは再び感嘆を返した。なるほど、異国にも自分の名があり、それを好意的に呼ばれたならば心を引かれよう。
「それで、母は思ったんです」
 ふいに伝聞の言葉遣いではなく、ハラキリは断定の口調を使った。その唐突な変換にニトロははっとして、道の先を見ていた眼をハラキリに向けた。
 ハラキリは、遠い宇宙の向こうを差すようにぴっと人差し指を立て、
「自分の子には日本にちほん由来の名前を付けようと。そして選ばれたのが、『ハラキリ』。『サムライ』を象徴するものの中でも大きな地位を占めるこの言葉は、例え被支配階級の者であってもサムライとなれば支配階級の特権を行使できる――という、このことは支配階級の特権を奪い去れることを意味し、権力者の支配が絶対ではないことをも暗に、されども明確に示す英雄行為とも目されているようです。同時に潔さとか強さとかの象徴でもあるそうで、母はそのため拙者にこの名を付けたんですよ」
「へぇ」
 そう言われると、友達の珍しい名前が何とも重みを帯びて感じられる。またもニトロの口から漏れたのは、心の底から素直に昇ってきた感動だった。
「とは、言っても」
 と、そこに重ねられたハラキリの再度の言い回しを聞き、ニトロはぴくりと眉を動かした。
「何だよ。まだ何かあるのか?」
「これは異文化についてのことです。この分野ではそれまでの理解が翻るのも茶飯事。ですから、『ハラキリ』の本当の意味は全く違うものかもしれません。でしょう?」
「……うん、まぁ、そうだけど……」
「母は自信があるようなんですがねぇ、拙者はこの点についてはどうにも間違えている気がしてならないんですよ。ひょっとすると、真実を知ったら拙者は赤面して泣いちゃうんじゃないかってくらいに」
 そう言いながらも決して赤面して泣くことはないだろうハラキリのとぼけたセリフにニトロは少し吹き出して、それから少し意地悪なことを聞いた。
「それ、おばさんに言ったことはあるのか? 本当は変な意味合いだったらどうするんだって」
「ありますよ」
「おばさんは、何て?」
「こう酒を飲みながら……違ってたら悪い、あっはっは」
「うわ、そいつぁひでぇ」
「ひどいでしょう?」
 ニトロが発した呆れ声に対し、ハラキリは気楽に応える。
 その応答があんまり他人事のように気楽だったものだから、ニトロが思わず歩を止め友に顔を向けた。と、そこにちょうどハラキリも振り向いて、二人の視線がばちりと噛み合い、あんまり見事な視線の正面衝突の衝撃は滑稽なまでに二人の目を同時に丸くさせ――
「そいつは、本当にひどいもんだね」
「ええ、全く。本当にひどいものです」
 視線を合わせたままもう一度言い合って、それがにわかにとてもとてもおかしく感じられ、そうして二人は、大声を上げて笑った。

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