A.I.――人工知能。

現在の生活はこれ無しにはありえない、と言い切れるほどに普及している。
用途は一般家庭の『お手伝いさん』から、工場の『管理人』まで多岐。

A.I.には二通りのものが存在し、汎用A.I.とオリジナルA.I.がある。
同じくA.I.という名称ではあるが、汎用A.I.とオリジナルA.I.は別物であり、基本設計も全く違う。
汎用A.I.は純粋にソフトウェアである一方、オリジナルA.I.はその設計から、『電脳世界』に“生きている”と捉えられることもある。

汎用A.I.は命令されたことのみに従うため、マスターは1から7まで命令をしなければならず、『生活用』・『運転用』など用途に合ったプログラムをインストールしなければならない。また性能の向上は、プログラムの更新による。

一方、オリジナルA.I.は完全自律思考を持ち、マスターの命令外の行動も取れる。ただしマスターの権限に逆らうことはできない。マスターは1から3くらいまでの命令をするだけで後は放っておいても、勝手に成長してくれる。
技能の取得に関しては、各種プログラムのインストールを汎用とは違って必ずしも必要としない。オリジナル同士でのデータの提供しあいも可能で、技能の向上は自ら行える。必要とあれば、インストールされたプログラムを応用し、自らの経験から改善していくことも可能。
成長のスピードや能力にはそのA.I.各々の個性が反映される。つまり、怠惰な個性を持ったA.I.の場合、とにかく成長が遅かったり、マスターの意向を捉えるのに鈍かったりする。
これがオリジナルA.I.の『デメリット』。
中には特有の『我儘行動』を取ることもあり、人間に近いためか極稀に『発狂(クレイズ)』することもある(頻度は汎用A.I.のバグよりも少ないと言われる)。
また、マスターに命じられて違法行為を行った場合、マスターへの法的罰則と共に、A.I.にも罰が科せられる。種類は『機能制限プログラム』や、次に同じ事を行うと発動する『条件爆弾』のインストール、最も重くて『消去』がある。
マスターの命令がなく、マスターのためとA.I.が起こした『暴走』から行われた犯罪については、ケースバイケースではあるがマスターに累が及ぶことは少ない。(ただし、次はオリジナルA.I.の使用を禁じられたりすることも)

汎用A.I.は『ソフトウェア』であるため幾らでもコピー・バックアップが効くが、オリジナルA.I.は設計上、またその特質性から複製コピーが作れない。もし強引にコピーしようとしても、基幹部分に組み込まれた自壊命令ネクローシスによって阻止される。バックアップとて、可能なのは基本的な人格情報やハードディスクにある外部記録だけで、完全なる二個を作り出すことは不可能。
そのため、オリジナルA.I.に愛着があると、それをハードウェアの損傷や悪意のプログラム等のために失った場合、家族を亡くしたと同等のショックを受けるものが多い。
それを嫌い、汎用A.I.を選ぶ者も多い。
また、汎用A.I.は単純なルーチン作業はオリジナルA.I.と遜色ないが、複雑で分析と自己判断を伴う作業でオリジナルに劣る。しかし最低限の生活には必要十分なサポートをしてもらえる上、完全に道具として扱える気楽さから、こちらを選ぶ者も多い。

気楽に扱え、初めから一定の動作が保証され、生活には必要十分な性能を持つ汎用A.I.。
ある程度成長するまで手はかかるものの、自由度や幅広いコミュニケーション能力、性能の自己向上が可能で、理論上あらゆるコンピューターに関する技能を保持できるオリジナルA.I.。
どちらを選ぶか。アデムメデスの一般家庭での割合は、汎用:オリジナルで6:4ほど。マスターの趣向もあるが、特に高度な命令をA.I.に与える必要がある人ほどオリジナルを選択する。

ちなみに汎用A.I.は様々な企業からキャラクターものが販売されていたりする。
オリジナルA.I.は『素プログラム』を購入することで、あるいはマスター間での譲渡という形で得ることができる。

オリジナルA.I.は『強いA.I.』であり『記号的A.I.』と『非記号的A.I.』を同時に実現したコンピューター知能(生命)とも言い換えられる。
その場合、汎用A.I.は『弱いA.I.』で『記号的A.I.』となる。

さらに差を言えば。
知能を持ち自己判断を行う制御システム・思考ルーチンが『汎用A.I.』。様々なシステムにインストールが可能だが、インストールしたシステムから切り離すことはできず、誰が使っても変化はない。
コンピューター上で知的生命体と近似の振る舞いができ、制御システムをコントロールできるのが『オリジナルA.I.』。システムに固定されず、一つのシステムを正常動作させながら複数のシステムを操作することも可能。かつ、そのA.I.の個性と使用者(マスター)の影響により特有のキャラクターを有する。

また、「汎用」というのは、アデムメデスで使われているA.I.は基幹設計がオープンソースであり、そのソースが様々なA.I.に派生できるよう汎用性を重視して作られているため。『「汎用A.I.オープンソース・ライセンス」を用いた「人工知能製品」』の総称として“汎用A.I.”と言う。
そのため、『該当システムに特化した「専用」A.I.』も便宜上「汎用A.I.」と呼ばれている。
同時に、より高次の汎用性を持った「オリジナル」の出現以前の名残でもあり、オリジナルとの区別のためでもある。オリジナルの汎用性に比すると劣るために語弊があるという議論もあるが、広く万人向けにできていることも「汎用」と呼ばれる要因となっている。

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