緑地として在る閑林の隅に、微かに薬味の香りが放たれている。小さなその木は枝の端々に瑞々しい新芽を息吹かせている。
棘のある枝を幾つもの足でしっかと掴み、波打つように歩いていく一匹の芋虫が樹上にあった。
全身にはイボがゴツボツと浮き出して、真っ黒な体には白いペンキで汚く塗りつけたような帯がある。悪い物を食べた鳥の糞に似ると言われても、きっと頷くしかないだろう。
まだ若い芋虫は若く柔らかい葉へと向かっている。
人の椀上にも添えられる清々しい木の芽を存分に食べようと、一心不乱に向かっている。
今は醜い体を大きく育てる、それだけを考えているのだろうか。
やがて蛹の中で、美しく織り出した羽衣をまとうと知っているから。いずれ美しく、大空へ羽ばたくことを知っているから。
050628-30-050630