しゃらしゃらと早瀬を下る水の音が、生まれては砕ける水鏡の光を溶かしている。川べりに群れるツルヨシの葉がそよ風に揺れている。水面に丸い頭を突き出す浮きの朱が、瀬の尾に撫でられ静かに流れている。
柔らかな青空には綿雲。向こう岸の河原の先を緑に染めるシロツメ草の中、幾数ものタンポポが鮮やかな花を陽に誇っている。
白髪の男がいた。ただ黙して座し、浮きが
綿雲が先よりずいぶん西へと泳いだ。ふいに、朱色の浮きが水底に引きずり込まれた。
ひょうと竿が音を立ててしなった。
水を切り縦横に走る糸が、抗う
だが抗うにはすでに遅かった。円熟した男の腕は
050221-22-050228