スピードメーターの針は100を超えた辺りで前後していた。掛け流しにつけられたラジオは、順調に流れる道路情報を伝えていた。ともすれば速度をどこまでも上げてしまいそうになる。逸る気持ちに追いつこうと、アクセルを踏む足に力を込めてしまう。
何週間ぶりだろうか、家に帰るのは。
ここ最近は忙しさに負けていた。週末には必ず帰る約束を、初めて破ってしまった。
昨夜、帰れることを告げた電話の向こうで、妻は不機嫌そうだった。娘は、怒っていた。
二人の声を思い返しては緩む頬を撫でて、玄関を開けるその時に思いを馳せる。
助手席に置いた、美味しいワインとクマのぬいぐるみ。これで許してもらえるだろうか。
つい心に乗せて速度を上げそうになる。そのたびに妻の「気をつけて」を思い出して、彼はまたアクセルを踏む足から力を抜く。
高速道路の継ぎ目が生むリズムに、プレゼントたちは、とても楽しそうに揺れていた。
050129-050130