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2007年09月19日

覆面作家企画3:Eブロックの感想&推理

前回の正答率は三割強。
今回はもうちょっと上を狙いたいな。

まずは前回同ブロックのお隣だった高村紀和子さんのいるEブロック。


推理結果

E-01  空の果てまでこの歌を      >藍咲万寿さん
E-02  虚無の空              >小月静夜さん
E-03  煙の向こう側            >サツキシノブさん
E-04  鹿神様の宝箱            >森崎さん
E-05  幽霊は長月に笑う         >高村紀和子さん
E-06  デイエンド              >藤村脩さん
E-07  夜明けの空のその向こうまで  >鈴埜さん
E-08  リルハの真珠            >早瀬千夏さん
E-09  1Gの世界              >柚希実さん
E-10  至高の空               >宇津木さん
E-11  胡蝶の夢               >上原友里さん


詳細は<続きを読む>から。がんがんネタバレしてますので、未読の方はご注意下さい。



E-01  空の果てまでこの歌を   >藍咲万寿さん

 その戦争の結末を知っているから、早枝と一馬の会話が、内容は希望に向かい温かなもののはずなのに、どこか切ない。その切なさをさらに引き上げているのは、華やかな歌劇団のイメージがあるからでしょうか。望郷にも似た心で、華やかなその世界を共有している二人が語り合うから。
 当時の背景を丁寧に描写しているので、歌劇団と戦争の関係という見知らぬ分野も戸惑うことなく読めました。作者さんはここらへん、気を使ったのかな? 説明の量が過不足なく、作品の雰囲気を壊すことなく絶妙でした。
 戦争が終わった後、二人が再会できているといいですね。役者と、観客としても。


・ルビが《》
・外国の作品が好き? 洋館とか。瀟洒は読みなれてないと出てこないような。
・文語なれど口語の風味。時間的な視点が作中時代になく、現在から振り返るような書き口。
・歌劇団
・文中強調“”

:歌劇団ネタでその戦争時背景はそれが好きでなくては出てこない気がする。観劇をこよなく愛する、に乗ってみる。




E-02  虚無の空   >小月静夜さん

 淡々としながら妙にほのぼのとした文章が心地いい。そして文の雰囲気と同調しているかのようなローズがいい味を出していますね。拾い癖とか、どこかすっとぼけた感じがナイス。あまり描写はありませんでしたが、ローズと博士の会話は多分天然ボケとツッコミのほのぼの会話になるんじゃないかなーと。暗い影背負う主人公も居心地良くいついちゃうくらいだから。
 作品の構成も面白かったです。これでもかとばかりに謎めいた少女を「あの怪物」じゃないかと疑わせる描写を重ねて、やはりと思わせたところで逆に返す……だけならともかく、さらにラストでやられましたよう。ローズ、やっぱりアレじゃ……


・「――」の多用。

:文の雰囲気も含めて、当てはまるかな?




E-03  煙の向こう側   >サツキシノブさん

 灰と煙に包まれ鬱々とした世界はティーレの目を通して描かれているとはいえ、だからこそリアルに灰色の世界が目に浮かぶ。時代としては産業革命辺りのイメージかな。煤で灰を患い常に死の影がつきまとっているのに、それなのに作品からは不思議と鬱屈して世を呪うようなマイナスの色は感じない。それには多分、ティーレが芯に持つ強さが影響しているんでしょうね。
 だからこそ、青い目の青年との邂逅が明るい未来への兆しだと感じられて、そしてラストも温かく迎えられる。
 目に浮かぶ色は冷淡なのに、読了後はとても爽やかな気分になりました。


・誤字「耐えた→絶えた」見直し時間なかった?
・会話と地の文の間に空行。フェイク?
・改行と空行で演出。

:日記を見ると提出もギリっぽいな。会話と地の文の間に空行も当てはまるものあり、サツキシノブさん確定か。




E-04  鹿神様の宝箱   >森崎さん

 中国を舞台にした昔話。実直で不器用なのだろうことが想像できる主人公が、善行の返しに幸せを得る、その流れが綺麗に組み立てられていて。
 そしてこれはミスリードを狙ったのかな? 『子宝に恵まれないのが悩み』と先んじて振ったのは、中身のない宝箱がそれを叶えるためのものかと思わせるのは。だとしたら、見事に引っかかりましたとも。饅頭にカビが生えたところで「???」でしたとも。なるほどなー、そうきたかー。しかもそのミスリード(決め付けちゃってるけど)を最後に回収するのも心憎い。
 舞台設定も綺麗で、ラストの土地の寒村の風景に突然鮮やかな牡丹を持ってくるから印象が鮮烈。ただ事でないとより強く。最初から最後まで構成の掌の上で転がされちゃった感じです。でもそれが楽しい。


・純文系の語り口? ナレーションで進めることも可能な感じ。
・セリフに《》。
・書きなれている?

:執筆暦も長いし、投稿を取り止めたものが夫婦もの。色は随分違うけど、同じ夫婦もので来る可能性も低いと思うけど……賭けてみる。




E-05  幽霊は長月に笑う   >高村紀和子さん

 世を斜に構えて眺めているような委員長の痛烈な皮肉と婉曲な罵詈雑言に満ちた独白が小気味いい。饒舌だなあ。よほどこの手のものを書きなれているか、考えているか。
 空の二つの読み方で大きく変わる意味の扱いが、この話に深みを。他人と自分を区別するための己の言動を顧みる場面で、先の『心を守る術はさほど多くない。』という一文がじんわり効いてくる。
 構成にも饒舌な文体にもうならされる。
 思春期の尖がった自我の主張を「ほうら、君にも当てはまるところがあるでしょう?」と見せつけられているようで、読みながらほろ苦かったり苦笑じみたり。
 あと、オチにいたるための仕掛けも巧い。いや、勘違いかもしれないけれど、「そらみさん」っていったらイメージって女性に寄りがちだものね。


・高村紀和子さん? 前回お隣だったので印象深く、それと同じ印象を受けた。
・苗字漢字名カナ
・落語に通じる軽妙さも感じる。

:第一印象で。舞台ももしかしたら前回のと同じ学校かも。




E-06  デイエンド   >藤村脩さん

 饒舌でユーモアに溢れた文章。ところどころに差し込まれた小ネタににやりとしてしまう。焦っていながらもパニックにならずどこか余裕のある主人公を支点にしたこの語り口が、キャラクターが立ちまくっている怪しい連中とのやりとりを笑えるものにしているんでしょうね。
 ところで主任は一体どういうキャラ付けを。『あたり前田のくらっかよ』って、随分古いネタのような……いや、今も時々使われているのを見ますけど、エセってことは中国人じゃないんだろうし……。
 ダイヤの伏線は面白かったです。借金取りがさすがに奪えないというものは何かと思ったら、なるほどと納得。黙ってりゃ売れるでしょうけど、出自を聞いたら買い手はつかないでしょうねぇ。ニュースで見たことありますが、綺麗なんですよね、本当に遺灰から? ってくらい。


・饒舌な一人称。得意か?
・色々古風なネタが出てくる。
・挑戦してきたか? 年齢制限に。

:前回(企画2)作の女性のツッコミのユーモアさは通じるものがあるかな? と。




E-07  夜明けの空のその向こうまで   >鈴埜さん

 陶酔している主人公の語り口が不気味さをかもし出していて、静かな「狂気」がじんわりと滲む。途中で妹がどういう存在なのかを匂わせたのは計算かな? そこから二つの結末が予想されて、どちらに転ぶのかと思わされながら文を追っていく時間はなかなかにスリリング。
 でも、語りの中には明るい方向へ向かう気配はなく。主人公は空の向こうへ。
 こうマイナスの方向に自己完結してしまったのは、元々主人公が持っていた性格なのでしょうか。だから、妹も目をつけたのかな。
 親との関係は、多分主人公の思い込みなんじゃないかなーと思えるのは、この結末のためでしょうか、それともこの流れのためなのか。本当のところは、どっちだったのかな。


・うなずくが「肯く」。こちらを使うのは珍しい。あるいはが「或いは」。もしくは、無理に使っているか。「事」を「こと」と開かないのも特徴か。フェイクの可能性も。フェイクだとしたら普段「頷く」を開いている可能性あり。該当して怪しいのは藤村さんと鈴埜さんだけど。

:「うなずく」を普段開いていることを重視してみる。藤村さんをデイエンドにしたので。ただ「或いは」は小月静夜さんが使っているんだよなー。




E-08  リルハの真珠   >早瀬千夏さん

 作中で「真珠」と名づけられた高地の湖、綺麗でしょうねー。高地の湖は何度かテレビで見たことがありますが、そのいずれも水が澄んでいて、その周りは草も乏しくほとんど荒野みたいな風景が広がっているからなおさら美しさが際立って。
 頑固なじいさんの不器用な愛情がまた……。そして振り返ることなく去っていく息子がまた変に不器用で、父親に似ていることがよく解る。それらとは対照的な子どもの純粋さがまたそれを際立たせて、だけどだからこそ彼らの交流が温かい。
 この二人を見た少年はどのような人生を送るんでしょうね。飛行機に憧れているから外に出て行ってしまいそうな気もするけれど、かといって息子さんと同じ軍へ入隊することはないような気もするし。もしかしたら、飛行機技師になるのかな。


・誤字「自身→自信」時間に注意。

:秘密の花園の感想で舞台そのものが主人公という記述。こちらも当てはまる。影響受けたとすれば、可能性あり。




E-09  1Gの世界   >柚希実さん

 ひたすら機械的な語り口だけれども、そこかしこにある「人間的」な感情。明確に感傷的に描かれてはいないけど、滲ませてある最期の時へ向けた『オリファン』が……切ない。
 そして最期を迎えるための準備をしに来た人間が、それぞれにオリファンに思い入れがあるからまた切なく、過去にニュースで見た事柄――それも反対した事柄に、時が経って自分達が最後の作業しにきたというのが熱い。オリファンの廃棄が避けられないとしても、最大限その存在を残そうとしているのが。
 無機質な語りの裏にある情の深さが、最後に燃え尽きていく過去の遺物を贈るはなむけのようで、読了後は悲しくも爽やかな気持ちが残りました。


・SF アイザック・アシモフの系譜か。「アルジャーノンに花束を」の香りも。アルジャーノン>柚希実さん
・「セリフ」改行後の字下げなしが二箇所。
・ルビが《》
・『-終-』

:意気込みにアルジャーノン出してきたってことはヒントか? それに賭けてみるか? SF好きな宇津木さんと悩むが。




E-10  至高の空   >宇津木さん

 ダウンヒル競技のスピード感が心地いい。作者さんはスキー競技に詳しい方? それでなくてもスキーが好きな方でしょうか。少なくとも学校の授業でやりました、程度の知識だとこれはなかなか書けないと思うんだけど……。
 ちょっと残念だったのは、肝のhevenly blueの場面があっという間に過ぎてしまったこと。スピード競技の刹那の間のことだからさっと文章の中に紛れ込ませたのかもしれないけど……きっと素晴らしく鮮烈な青だったんでしょうね。雪山の白とのコントラストで、際立って。
 ……あー、なんかスキーで派手にこけた時のこと思い出した。あの空は青かった。ごろんごろん転がっている時に見た空だから一瞬だったけど、はっきり憶えてる(笑
 それにしてもコーチがいい味を出してますねー。こういうちょっといい加減な感じがするくらいの方が、選手を伸ばすものなのかも。


・英数字半角
・スキー競技に詳しい? 調べて、というのもありそうだが。
・お題消化を英語の色で持ってきた。

:英語で青空の色っていうのはなかなか発想できない気がする。留学していたって言うし、それが英語圏とは限らないけれど……。英数字半角も当てはまる。




E-11  胡蝶の夢   >上原友里さん

 謎に包まれた少女の正体は一体なんだったんでしょうね。一人の男を狂わせてしまうほどの存在なのだろうけど、それが語られていないからミステリアス。
 団長さんは何だか苦労性っぽいですね。部下のやり取りもどことなくそれが滲んでいるし、少女を引き取っているし。お人好しで貧乏くじを引かされる中間管理職な雰囲気が……。でもそれがあるから、狭い空しか知らない人生を送ってきた少女の今後が幸福だろうと思えて、狭い空しか知らなかった少女の世界が広がっていくというラストの一文がとても優しい。
 そしてこれは元々中~長編にする予定だったのか、それとも既に作品・シリーズとしてある世界観の一部なんじゃないかというほど設定が細かい。多分裏設定も膨大にあるんでしょうね。よく20枚にまとめたなー。


・ルビが《》
・区切りが▼▲▼

:フェイクの可能性大だが区切りに▼を使っている。騎士ものが主軸にあるし、文中フルネームの使用も多い。




推理、再考が必要な気もするなぁ……;

投稿者 楽遊 : 2007年09月19日 21:28

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