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2007年02月12日

覆面作家企画2・Gブロックの感想

覆面作家企画2の推理期間もあと十数分で終了。
期間中滑り込みですが、Gブロックの感想です。

感想はネタバレ前提で書いています。未読の方はご注意を。
続きを読むからどうぞ。





G-01  暗闇にまたたく

キャラがいいなー。奔放な女の子に苦労させられている青年。冷めた地の語り口とは対照的だから、よけいに際立つ。
「案内人」の言葉に臨死の世界と判れども、女の子が青年曰く「役立たず」なせいで主人公が生死のどちらに転ぶか判らず緊張感が満ち、最後には曰くありげな青年の人の好さで温かくなれる。
失望の中に現れた一つの希望が、心地良い話でした。
それにしても、臨死の世界でこんな娘さんには会いたくないなぁ。いや、明るいのはいいんですけどね。……無邪気って怖い。






G-02  月の隣

千尋と和秀の微妙にかみ合わないようで、かみ合っているやりとりが楽しい。簡潔で淡々と進んでいく地の文が作品全体にどこか爽やかさを与えていて、学校の屋上という舞台がなおさらに、ああ、青春だなぁ。と、思っていたらラストの急転直下に驚いた!
確かに事故は突然やってきて、あっさりと全てを変えてしまうのだろうけど。簡潔で淡々と進んでいく地の文が急激に温度を下げていくのが「寒さ」を演出していました。
「月」を失っても「太陽」が輝き失わずに友を待つのが切ない。だけど、絶望的な状況であるはずだろうに読後感は妙に爽やかなのは、「太陽」がいつか和秀の目が覚めると信じて疑わずにいるからでしょうね。





G-03  クリスマス・オーナメントと子供と私

『くそ、別れてしまえ』
どストレートな一言に爆笑ですよ! 冷静な語り口で毒を吐くマネキン、素晴らしい。両親の問題で悩む少年に、動くことも叶わず一人きりでいるしかないマネキンとしての諦観に溢れながらも、温かい励ましをかけるマイケルお前は「ナイスガイ」だ。
少年との交流は温かく、せっかく話せる相手が現れたのに、相手を気遣うマイケル、ほんと良いヤツ。信一君は運がいいですね。意志のあるマネキンが、人生において重大な転機を良い方向に導いてくれる存在で。
そして、少年が前向きに一つの「試練」を乗り越えた後、また一人きりで立ち続けるマイケルが口にした一言が今度は哀愁と共に心に響き、それがただの嫉妬から出た言葉ではなかったと素直に理解できる。――巧い。






G-04  さいはての星

叙情的で、美しく、詩的な文章が織り上げる情景が素晴らしい。情動を押さえられた筆致は詠うようで、『空にかけられた銀の道』という言葉に、流れるように展開するこの作品の色がそれと同様に見えてくる。
儚い少女の優しさが、痛い。奇跡を描きながらも生々しい現実がそれを打ち砕き、悲劇であるはずなのにしかし突き刺さるような悲しさがないのは作品の力でしょう。
赦されていた王の、穏やかな――おそらくは死に顔は、一つの幸福かもしれませんね。
感情が美麗な、それでいてどこか不気味な光景で切々と描かれる物語を追っていると、心がそのまま耽溺していってしまいそうで……。
作品が生み出す空気にどっぷり浸かって「帰ってきた」と、そう言いたい小説でした。






G-05  星より甘やかに

タイトルに反して厳しい勝負の世界に生きる主人公の、大きな勝負を目前にした心の揺れ動きが沁みる。
僕も大切な「一戦」を前にして、彼のように「勝とう」と思いつつも決心が揺らぐ経験を味わってきました。いや、それは誰もが経験することでしょう。その人にとって大事な「一戦」は、小憎らしいほど様々なところに転がっていますから。
だからこそ主人公の気持ちが解るし、文恵ちゃんの励ましがまた沁みる。
力強いメッセージ。これは作者さんが読者に向けて放ったものなのか、それとも自身何かを貫こうとした決意を込めたものなのか。行間に、熱い気持ちが溢れているような気がします。
そして、「ああ、だからこのタイトルなのか」と甘い白星のことと納得していたら……最後に、もっと、もーっと甘々な白星が!






G-06  花に星

おお、吉原。と思った次の瞬間に世界観がひっくり返った……。なぜこの描写でこの世界観にしたのだろうかと思ったけど、「シャナ」という名が、かんざしの星が鳴らす音にかかっていることで納得。途端にかんざしの音がより美しく感じるから面白いですね。
そして和の美意識に溢れた描写が凄い。『この世のものとは思えないような紅い洞穴』、脳裡に投げ込まれた赤赤とした光景は鮮烈で、本当に見てみたいと思いました。京都か、京都にならあるか?
苦海から抜け出したシャナ、もしかしたら宮廷こそを苦海と思っていたのかもしれないアウグ、苦海に一人残ったライカ。三様の人物が描き出した物語は、情念渦巻く赤い街を背景にしてなお、それに飲みこまれることなく温かな赤を灯しているようでした。






G-07  峠の我が家

宇宙船の中でプラネタリウムを見る。それが何と心に響くことなのか。
これまで考えてもみなかったな。確かに、地球から遠く離れた時、例えそれがどこを見ても星の空間の中であっても、地球から見上げる星空を見たくなるかもしれない。郷愁がくすぐられて、ああ、解る。その気持ち、解る。
故郷を失ってから長い時を超えて、郷愁を知らぬロボットと、望郷を語る人間のやり取りがしんみりくる。ノスタルジックで、だけどそれはけして後ろ向きなものじゃなく、ちゃんと今の「ホーム」を本当の「故郷」にしているからこそ胸に響く。
第一世代が限定された地域の風景じゃなく、広い範囲で見える光景を持っていこうとしたことがそのままとても大きなものを喪失したことを激しく伝えて、また……。






G-08  勝負

本格時代劇、肉厚の人物とそれを取り巻く背景、練達の語り口、度量の大きな視点。
いやもう、上質な時代劇を読み終えた満足感で一杯です。
仇討ちの呪縛から解き放たれ、ささやかな幸せを掴んでいた新之助が偶然にも仇を見つけることの因果の皮肉。しかし仇討ちを果たそうとする覚悟は、「仇」を討つことではなく、「仇」のために斬らねばならぬという覚悟だからこそ、この物語は厳しい。
何を美化するわけでもなく、それが「茶番」だと知り受け止めてなお、「人」として決意を固めた新之助が悲壮でたまらない。
結末は語られていないけれども、どうにか生き残って欲しいと思う。有明の星が印象的に使われていたのは、二人の男の「夜」が終わることを示唆しているのでしょうか。そうであるならば、新之助にはまた朝を迎えてほしいものです。






G-09  金曜日の屋上

映画を話題にした趣味丸出しな会話が楽しい! えっと? どれも架空の映画なんですかね? “狼たちの沈黙”は『羊たちの沈黙』と『狼の~』とかを混ぜたのかな? いや、浅学につき本当にあるなら申し訳ないですが、架空のものであればよくこれだけでっちあげたなと(誉め言葉ですよ!)。映画好き二人の会話が活き活きとしていてにやついてしまって、途中まで全く疑いも違和を感じませんでした。
その活き活きっぷりが効いているからラストへの流れが自然で、そりゃ社長も死ぬ気が萎えるわ。で、そんな誘われ方したら出席せざるを得ませんね、結婚式。社長の負けです(笑
『星』の使い方も映画のセリフに混ぜ込んであって、センスいいなー。会話はもう全編通して洋画の吹き替えの声が耳に響いてました。ヴァンダムのせいだ、ヴァンダムの。





G-10  星色謎解き

楽しい謎解き。一緒になって考えてました「グロナア」。「アナログ」? アナログだけがヒントって厳しくねーかと思ったら、ああ、そういうことかっ。
初めはやる気がなかった祐介が結局熱中しているのがいいですね。こういうの、やり始めると楽しくてとまらないもんなー。
犯人が誰なのかは途中の文の所々にあった伏線で見当がつきましたが、実際に自白するところになるともうくすぐったいやら微笑ましいやら。
一生懸命でいいですね。きっと謎を解こうとする祐介を見て内心は幸せ一杯だったんでしょう。それをずっと隠して潜伏するのは、大変だったでしょうねぇ。
でもナイショにしていたら彼はきっと気づきませんよー。言っちゃえー(笑






G-11  その手に星の砂を

ボーイミーツガール、出会いと別れ。過酷な環境で生きる少年と、そこから離れて行く少女。少年も少女と共に旅立つのかと思いきや、淡々と訪れる別れに少し驚きました。そして別れが何の迷いもなくかわされるから、二人の語る決意が潔く、堂々と伝わってくる。
少女の住む世界を羨むよりも、自分の中に芽生えたやましさに気を咎める少年の清廉さが眩しい。それがあるから、別れの時、「正直に」と告げることに強さがある。
少女が故郷と別れる前に、その最後に故郷で生きていく清々しい少年に出会えたことは、もしかしたらこの上ない幸運なのかもしれませんね。
二人が再会することはないかもしれないけれど、それでも互いの手に残る「ここにいた証」が二人の絆をずっとつないでいくようで、印象的でした。

投稿者 楽遊 : 2007年02月12日 23:48

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