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2007年02月12日
覆面作家企画2・Fブロックの感想
さあ、気がついたら1ブロックを推理するのにかけてた日数は約五日。
これじゃあこのブロックを終了するのは推理期間終了後じゃないかと気がついたのがFブロックの半ばに辿り着いた頃。
これではいかんと切り替えて、ここからは肩の力を少し抜いて、感想のみでいこうと思います。
推理まで手が回らず、申し訳ありません……。
これまでの分析混じりの感想と色合いが違いますが、それは仕様です。
どうかご容赦を。
感想は盛大にネタバレしていますので、未読の方はご注意です。
続きを読むからどうぞ。
F-01 星
主人公の語り口がすれ気味ながら軽妙で、相棒との会話も軽快で楽しい。『宇宙船のAIが思いっきりイヤイヤをして、涙まで流しながら懇願してきやがる。』ってところには思わず噴き出しちゃいました。危機に遭遇した主人公が聞いた声は、もしかしたら「ジョン」の前の主人の声? だとすれば、前の主人は何かしらの事故で「星」になってしまったのでしょうか。
機械に個性と名前を与えて馴れ合うのが嫌いという主人公の態度が、最後では打ち解けている様子が微笑ましく。
少しでもしくじれば宇宙の藻屑の世界に生きる彼らの絆がまた心地良く、面白かった。
F-02 星の数ほど
もう冒頭の一言で男性のキャラクターがっちり鷲掴み。今時そのセリフ、まさか怪しいマニュアル本とか読んできたか!? と内心でツッコミ。
じれったい男性の態度が続き、そして女性、よく言った! そりゃ騙されるわけがないし隠しきれるわけもありませんわな。こっちが思っていたことをばっさり言い切ってくれて爽快。男性が「その言葉」をどう言うのかと思っていたところに、気持ちいいほどストレートにまとまったラストが素敵です。
さー、彼はこの件死ぬまで言われるぞー(笑
F-03 モトラタトラット (ハナモゲトラッタッタ語で「目が覚めたなら」という意味)
無茶苦茶だーーー!(誉め言葉)
ノリノリの文体から繰り出される荒唐無稽な世界と展開がシュールでファニー。もう酒でも飲んだか脳内麻薬ダダ漏らして書いたんじゃねーかという文と会話が楽しい。画面の一つ一つに噴き出す。こういうの、大好きです。
ぶっ飛んだ世界を結局楽しんでいるような主人公に、その旅行記を無理矢理聞かさる幼馴染は大変だねぇと思っていたら、最後はしんみり。そういう理由があったのか。なるほど、シュルレアリスムなわけ分からん世界も、理由を聞いた後では納得するばかり。
熱い友情。常時ハイテンションの主人公、いい奴。そして、タフ。
ハナモゲラッタッタ星人のハナモゲトラッタッタ語の持つ間が抜けているのにどこか温もりのある響きと、その意味が素敵です。
F-04 星に願いをかけてみた
気になった言葉、「雨宿り」。先に雨が降っている描写がないからミスかと思ったけれど、次の「ひとりきりの心もとなさ」にかかっているのでしょうか。だとしたら、莢子はずっと心に雨を降らせているのか。それは悲しいなぁ。
シチュエーションが、莢子も自分でツッコミ入れてるけど、ご時世だけになし崩し的に犯罪者の仲間入りなりそうな状況ですね……。
少年の正体が分かった時、彼が莢子に声を掛けられた時に目を見張った理由を納得。しかしこの友衛くん、いい性格してるなあ。正体隠して同僚の女性の部屋に……いやいや。
F-05 夢売りの話
次第に不気味さを増していく展開に、最初はほのぼのさすら感じた「ですます調」の中に精神的なヤバさが感じられてくる。
こういう、禁忌が絡んだ話は禁忌を犯してから急展開するもの。しかしだからこそ続きが気になり、こんぺいとう売りとの「商談」にハラハラさせられる。相手が「契約成立」の前に行動を起こすくらいですから、よほど奪った「夢」には大きな意味があるのでしょうか。例えば、それを食えば人間に戻れるとか。
結末は……夢オチとも、これまでの出来事が夢だったと主人公が思っているだけとも取れる微妙な書き方。それだけに、静かな恐怖がある話でした。
F-06 翡翠
字、言葉遣いで時代を組み上げ、二人のエピソードで物語を紡ぐのが巧い。特に刀の扱いがリアル。刀に造詣が深い方か、本格派の時代劇を好まれる方が作者さんでしょうか。
明かされた二人の『真実』に驚きました。臣下の名前が全く出てこないから不思議に思っていたら、なんと、そういうことか。
名を分け合ったということは、二人は本当に二人で一人の存在だったのでしょう。それが、一人が二人と戻り、少年が半身の少女を生かすために死を選ぶ覚悟が鮮烈。
自由を手に入れた少女が支払った代償はあまりに大きいけれど、道が優しく照らされているのなら希望が溢れていると信じたくなる話でした。
F-07 ぷっぺ ~星の妖精~
舞台の一人芝居に使えそう。一人称の台詞回しがリズミカルで、耳に『ぷっぺ』が朗々と語る声が聞こえてくるよう。
日が沈み星が輝き出していく映像が目に浮かんで、それが夜空に浮かぶランプに妖精達が火を灯していくからと思うとロマンチックですね。
ベテルギウスにプロキオン、リゲル輝きポルックス。久々に聞いた星の名に、澄んだ冬空に眩しいほどのシリウスが思い起こされて。
……今夜、星でも見てみよう。
F-08 流星の夜、金の風吹く
機械と魔法が同居する世界で、大人なら一日で一周できる星。
SFでファンタジーで、どことなくメルヘンで、と思ったら話はなかなかシビア。
王道を貫く物語。長編のプロローグといった感じでもあり、でもちゃんと短編として終わって余韻を楽しませてくれて。
前向きなキャラクターがいいですね。健気なノイがジズの描写につきまとう影を引き立てていて巧み。骨組みのしっかりした話で、最初から最後までいい意味で安心して読めました。
F-09 カフェ・アルモニカ
うわ、凄く美麗な文章。
選ばれた言葉、句読点や体言止めを効果的に使い、文章のリズムを自由自在に操り艶美な世界を編み上げている。
……いや、この作品にあまり言葉はいらないですね。
「活字でしか表せない情景、堪能させていただきました」
F-10 星龍井戸譚
重厚な雰囲気をまとう中国民話といった物語。
作者さんはよほど中国語、神話や風俗、五行思想などにお詳しいのでしょうか。淡々と進む筆致を密度の高く満たす世界観に果たして話がどこに向かうのか、微かに漂う不吉な予感に気をもまされっぱなしでした。
最後のシーンは美しく、迫力。子どもの頃の「神話」がそこで絡んでくるとは。
真面目な垣筐と明朗闊達な圭籃の対照的な二人がもう愉快で、そして最後のやり取りにその後の二人の幸福が鮮やかに浮かびました。
F-11 ぼくと彼女
可愛らしいなぁーー。
突飛な「かわいそう」を連発する幼馴染に一生懸命対処する、ちょっとませてる少年の語り口にほのぼのさせられっぱなしです。
いや、山吹雅也くんがいーちゃんのことが大好きなことがありありと伝わってくる文章。そこに最後に放たれるいーちゃんの一言。
破壊力絶大ですよ、そりゃあ心臓がバクバクでハレツしそうになりましょうとも。
終始温かく、心和ませていただきましたとも。
投稿者 楽遊 : 2007年02月12日 01:01
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